2018年08月24日

第36回 日本受精着床学会

こんにちは、培養室です。

今回は、2018年7月26日、27日に幕張で開催されました、「第36回 日本受精着床学会 学術総会」に医師と培養士とで参加してきました。

 災害レベルといわれる蒸し暑い日でしたが、年々培養士が増えることによって、他院の培養士さんとの情報交換がより盛んになり、尚且つ講演も興味深いものも多かったため、時間がいくらあっても足りないと感じるくらい、とても有意義な時間をすごせました。

 その中でも、今回私が興味を持ったものは、「環境ホルモンと生殖・次世代への影響」という講演でした。

 近年、便利な生活になった一方、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)を含む多彩な化学物質が生活のいたるところに存在しています。
 環境ホルモン作用を持つポリ塩化ビフェニル(PCBs)は絶縁体、熱媒体として多様な物に使用されていますが、残留性、生物蓄積性などから、製造、輸入、使用が禁止されているようです。
 しかし、今も私たち全員の血液から検出されています。

 私たちはPCBsを9割以上食事由来から摂取していますが、臍帯からも検出されるため、胎児へ母子間移行が行われたり、母乳によっても、子へ暴露されることが知られています。

 環境要因由来により、アレルギー・喘息の増加、脳神経発達異常の増加、小児肥満などがいわれており、このことが直接、不妊治療とは関係がないように感じられますが、その他にも、男性の精子濃度が低下、男女ともに思春期早期化などが起き、男性は、精巣が従来より早く重くなるため、ピークが早く、そして早めに低下(40代位、従来は60〜70歳代)してきています。これは、精巣の成熟と衰退が早まっていることを示唆する結果だといえると思います。
 
 その他にも、複合影響として、3世代まで影響が残ってしまうものや3世代目で影響が出始めるものなど、があるようです。
 
 今回のこの発表は母乳より人工ミルクを推奨しているというものではなく、母乳には栄養が豊富なため、いいこともあるが、このようにデメリットもないわけではない、という位の捕らえ方で良いとの事でしたので、付け加えさせてもらいます。

 私たちは、当たり前のように化学物質であふれた生活を送っていますが、今年の異常なまでの暑さも踏まえ、環境について一人ひとりがもう一度、何ができるか考えてみることが今必要とされていると、感じられました。
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2018年08月23日

第59回 日本卵子学会

 こんにちは、培養室です。
 2018年5月26日〜27日にかけて開催された「第59回 日本卵子学会」に参加しました。今回の大会は、埼玉県大宮駅の近くにある「大宮ソニックシティ」で開催されました。発表は、いくつかの会場に分けて行われましたが、参加者の数が多く、人気のある講演などは、会場に入れないこともありました。
 今回も、全国の病院やクリニックから様々な研究発表や臨床報告があり、特に印象に残った発表について書いていこうと思います。
 
 まずは、サプリメント(メラトニン)を飲むことで、卵子の質を改善できるかもしれないという発表について紹介します。卵子は、身体と共に年をかさねます。そして、35歳を境に卵子の受精する能力や発育する能力が低下することは、すでによく知られています。この原因の一つとして活性酸素種(ROS)があります。ROSは、細胞に対して悪影響を及ぼすことが知られていて、卵子も例外ではありません。実際に、高齢な女性から採卵された卵子や卵胞液のROSの濃度は、若い女性と比べて高くなりがちです。
 そこで、ROSに対して有効的に働く抗酸化作用のあるメラトニンを、採卵周期(卵巣刺激から採卵までの期間)に服用したところ、受精卵の培養成績が改善したと発表していました。
 今までは、長期間サプリメントを飲み続けるという試みが多かったのですが、この発表では、短期間で効果が得られるという内容であり、とても興味深い発表でした。

 また、学術報告だけでなく、不妊治療に関わる者としての倫理的な考え方を問う発表もありました。近年、不妊治療、特にARTの施行件数が急増しています。2015年のデータによると、約20人に1人が体外受精で生まれた計算になります。しかし、この現象と比例するように、倫理的な問題も挙げられることが多くなってきました。
 例えば、非配偶者間の体外受精や代理出産です。これ以外にも、禁止された生殖医療での出産についての問題などがあります。また、このようにして生まれた子どもの法的親子関係の安定性を確保するための法整備が未だ整っていないのが現状です。
 そのため、最近、各学会(日本産科婦人科学会や生殖医学会など)で、不妊治療に携わる医師、胚培養士にむけて、倫理に関する講義が開かれるようになってきました。
 不妊治療は、日々進歩しています。しかし、日本自体が、不妊治療の進歩に追いついけていないように感じます。そのため、不妊治療に関わる医師や胚培養士、看護師の一人ひとりが正しい倫理観をもち、職務に向き合う必要があると思います。
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2018年06月19日

第15回 日本生殖心理学会・学術集会

 こんにちは、培養室です。
 2018年2月25日に東京の都市センターホテルで開催された「第15回 日本生殖心理学会・学術集会」に参加しました。この学会では、実際に治療にあたる医師だけでなく、患者さんと接する機会の多い看護師や、精神的サポートを担う生殖心理カウンセラーなど、それぞれの立場から患者さんへの支援についてのお話を聞くことができました。

 年々、医療の進歩によりがんを克服する患者さんが増えつつあると同時に、がん生殖医療が発展してきています。がん患者さんはがん治療のため化学療法や放射線療法を受けます。その結果、卵巣や精巣はダメージをうけ、妊娠する力である妊孕性が低くなることがあります。
 この妊孕性を温存するため、がん治療を開始する前に、女性では卵子・胚または卵巣組織、男性では精子を凍結保存し、がんが治った後、妊娠を望めるようにするのが「がん・生殖医療」です。
 また、妊孕性温存への取り組みだけでなく、がんを治療された方(がんサバイバー)の治療後のホルモン状態の定期的な確認、もしくは不妊治療のサポートも行っています。そして、残念ながら子供が欲しくても授からなかった方に、子供をもつ一つの選択肢として、里親・養子縁組の制度の情報提供を行うことや、また、子供を持たない選択に関するケア、患者さんの家族へのサポートも行われています。

 がん患者さんはがんの告知を受け、精神的な負担が大きい中で、同時に自らの妊孕性温存について考えなければなりません。
 そのような大きな精神的ストレスの中、短期間で意思決定を迫られている患者さんに対し、わかりやすい言葉で理解しやすい情報提供や、質問しやすい環境づくりをすることで、心理的な負担を和らげることが大切だと思いました。
 医療従事者による心理的支援、心理士による心理カウンセリング、多職種・他施設の連携を充実させることで、患者さんと医療従事者がお互い歩み寄り納得してよりよい意思決定ができるような体制をつくることが重要であると感じました。


posted by kl at 16:17| Comment(0) | 日記