2018年08月23日

第59回 日本卵子学会

 こんにちは、培養室です。
 2018年5月26日〜27日にかけて開催された「第59回 日本卵子学会」に参加しました。今回の大会は、埼玉県大宮駅の近くにある「大宮ソニックシティ」で開催されました。発表は、いくつかの会場に分けて行われましたが、参加者の数が多く、人気のある講演などは、会場に入れないこともありました。
 今回も、全国の病院やクリニックから様々な研究発表や臨床報告があり、特に印象に残った発表について書いていこうと思います。
 
 まずは、サプリメント(メラトニン)を飲むことで、卵子の質を改善できるかもしれないという発表について紹介します。卵子は、身体と共に年をかさねます。そして、35歳を境に卵子の受精する能力や発育する能力が低下することは、すでによく知られています。この原因の一つとして活性酸素種(ROS)があります。ROSは、細胞に対して悪影響を及ぼすことが知られていて、卵子も例外ではありません。実際に、高齢な女性から採卵された卵子や卵胞液のROSの濃度は、若い女性と比べて高くなりがちです。
 そこで、ROSに対して有効的に働く抗酸化作用のあるメラトニンを、採卵周期(卵巣刺激から採卵までの期間)に服用したところ、受精卵の培養成績が改善したと発表していました。
 今までは、長期間サプリメントを飲み続けるという試みが多かったのですが、この発表では、短期間で効果が得られるという内容であり、とても興味深い発表でした。

 また、学術報告だけでなく、不妊治療に関わる者としての倫理的な考え方を問う発表もありました。近年、不妊治療、特にARTの施行件数が急増しています。2015年のデータによると、約20人に1人が体外受精で生まれた計算になります。しかし、この現象と比例するように、倫理的な問題も挙げられることが多くなってきました。
 例えば、非配偶者間の体外受精や代理出産です。これ以外にも、禁止された生殖医療での出産についての問題などがあります。また、このようにして生まれた子どもの法的親子関係の安定性を確保するための法整備が未だ整っていないのが現状です。
 そのため、最近、各学会(日本産科婦人科学会や生殖医学会など)で、不妊治療に携わる医師、胚培養士にむけて、倫理に関する講義が開かれるようになってきました。
 不妊治療は、日々進歩しています。しかし、日本自体が、不妊治療の進歩に追いついけていないように感じます。そのため、不妊治療に関わる医師や胚培養士、看護師の一人ひとりが正しい倫理観をもち、職務に向き合う必要があると思います。
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2018年06月19日

第15回 日本生殖心理学会・学術集会

 こんにちは、培養室です。
 2018年2月25日に東京の都市センターホテルで開催された「第15回 日本生殖心理学会・学術集会」に参加しました。この学会では、実際に治療にあたる医師だけでなく、患者さんと接する機会の多い看護師や、精神的サポートを担う生殖心理カウンセラーなど、それぞれの立場から患者さんへの支援についてのお話を聞くことができました。

 年々、医療の進歩によりがんを克服する患者さんが増えつつあると同時に、がん生殖医療が発展してきています。がん患者さんはがん治療のため化学療法や放射線療法を受けます。その結果、卵巣や精巣はダメージをうけ、妊娠する力である妊孕性が低くなることがあります。
 この妊孕性を温存するため、がん治療を開始する前に、女性では卵子・胚または卵巣組織、男性では精子を凍結保存し、がんが治った後、妊娠を望めるようにするのが「がん・生殖医療」です。
 また、妊孕性温存への取り組みだけでなく、がんを治療された方(がんサバイバー)の治療後のホルモン状態の定期的な確認、もしくは不妊治療のサポートも行っています。そして、残念ながら子供が欲しくても授からなかった方に、子供をもつ一つの選択肢として、里親・養子縁組の制度の情報提供を行うことや、また、子供を持たない選択に関するケア、患者さんの家族へのサポートも行われています。

 がん患者さんはがんの告知を受け、精神的な負担が大きい中で、同時に自らの妊孕性温存について考えなければなりません。
 そのような大きな精神的ストレスの中、短期間で意思決定を迫られている患者さんに対し、わかりやすい言葉で理解しやすい情報提供や、質問しやすい環境づくりをすることで、心理的な負担を和らげることが大切だと思いました。
 医療従事者による心理的支援、心理士による心理カウンセリング、多職種・他施設の連携を充実させることで、患者さんと医療従事者がお互い歩み寄り納得してよりよい意思決定ができるような体制をつくることが重要であると感じました。


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2018年06月14日

日本A-PART 学術講演会 2018

 こんにちは、培養室です。
 今回は、2018年3月25日(日)に開催された「日本A-PART 学術講演会」に参加しました。
会場は、東京の「ハイアットリージェンシー東京」で開催されました。
 この大会では、3つのシンポジウム、2つの教育講演そしてランチョンセミナーが行われました。
各演題を発表された先生方は、各分野のプロフェッショナルであり、とても有意義な大会に
参加できたと感じました。
 本大会では男性不妊治療や再生医療、ガンと妊孕能などについての発表があり、その中でも
男性不妊治療の発表に関心を持ったため、今回はこちらを紹介します。
 日本では、10~15%の挙児希望カップルが不妊症で悩んでいます。不妊症の原因として、
半分は男性が関与していると考えられています。しかし、不妊症について受診する方の多くが
女性であり、受診による男性因子の特定はされないことが大半です。
 現在、女性の不妊治療と比べて男性の不妊治療は、大きく遅れています。その理由として、
大きく2つにわけることが出来、一つ目は、男性自身が検査もしくは治療を受けないこと。
二つ目は、女性の不妊治療の分野と比べて、男性の不妊治療の分野が進んでいないことが挙げられます。
そのため、男性不妊の原因の83.4%は造精機能障害(原因不明)とされています。
 しかし近年、質の悪い精子のART成績が低いことが示されていて、このことから、男性不妊治療の
重要性が叫ばれています。
 
 今回の公演では、男性不妊の検査について基礎的な内容を示していました。
 ・禁欲期間について:2~5日であり、原則院内採精(持ち込みだと、移動中に精液所見が悪化する
           可能性があるため)
 ・検査回数について:2回以上(男性はその時の状態で、精液所見が変化するため、複数回検査
           する必要がある)
 ・生活習慣と男性不妊について:BMIが増加することで、乏精子症(精子濃度が500万/ml以下)
                になりやすくなる
 などの基礎的な内容について講演されていました。
 
 以前から言われていた事ではありますが、改めて、これらの事をきちんと守って治療する大切さに
ついて話されていました。
 男性の不妊治療と聞いても、あまり想像できないと思います。しかし、不妊の因子を持つのは、
女性も男性も同じです。現在、日本における男性不妊専門の泌尿器科のクリニックは、女性不妊専門
クリニックと比べて、とても少ない状況にあります。そのため、男性が不妊で悩まれ、受診を検討
されているようでしたら、男性不妊について検査できるかどうか調べてから、受診されることを
お勧めします。
 この発表を通して、男性不妊への関心がより高まってほしいと感じました。今後も、男性不妊の
発展を願いたいと思います。
posted by kl at 14:51| Comment(0) | 日記