2018年01月15日

第62回 日本生殖医学会学術講演会

 こんにちは、培養室です。今回は、2017年11月16日〜17日に開催された、第62回日本生殖医学会学術講演会に参加しました。会場は、山口県下関市の「海峡メッセ」と「ドリームシップ」の二か所に分けて開催されました。今大会のテーマは、「生殖医療の潮流を読み解き、幸多き未来へ」です。
 今回、様々な発表や公演、企業展示などを通じて、ARTに対する新たな技術の開発や導入に重点が置かれ始めているように感じました。
 ARTにおいて凍結技術(胚や精子)は、もはや無くてはならない技術の一つです。例えば胚の凍結を行う場合、培養士が胚を一つ一つ丁寧に凍結します。そのため、多数の胚を凍結保存する場合、時間が必要となります。また、凍結技術を習得していない者は技術習得に費やす時間も必要になります。そこで、メルクセノール社が全自動で胚の凍結を行う機械を作成し、発表を行っていました。この機械では、一度に多数の胚を凍結することが可能であり、凍結にかかる時間を短縮することが出来るとしていました。実際に臨床で使用した結果、培養士の凍結技術と差は見られない結果となりました。この発表に対して、確かに機械による胚凍結は素晴らしい技術だと思います。しかし、不意なアクシデントが起こったとき、それに対処できないことを考えると臨床応用には時期尚早のように感じました。
 また現在、受精卵の発生を動画で観察する技術(タイムラプス)をARTに応用しています。今大会の公演では、更に卵子や胚の細胞内変化を、細胞に影響を与えず観察することについて検討されていました。細胞内変化を観察する方法として、細胞に目的の蛍光タンパク質(特定の波長の光を照射することで光るタンパク質)を作らせることで、実際に確認する方法があります(ライブセルイメージング法)。しかし、この技術は、細胞に人為的に目的のタンパク質を作らせる必要があります。また、特定の光を照射することによる細胞への影響も考慮しなければなりません。上記のことから、ARTへの応用は不可能とされていました。
 そこで、細胞に対して非常に影響の少ない方法で細胞内変化の動きを観察する技術の確立を目指した報告がありました。現在は、企業と提携して研究を行っている段階であり、詳細な内容は発表されませんでした。この技術が確立すれば、例えば、染色体の形や数、動き方などを顕微鏡で実際に観察することができ、胚の選択にも応用できる可能性も示していました。
 日々、ARTは進歩しています。その中でも、ARTで使用する技術の進歩は劇的であり、素晴らしいことでもあります。しかし、どんな技術でも欠点はあり慎重に考えることでもあると、今大会を通して感じました。
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2017年11月09日

「第4回 静岡がんと生殖医療ネットワーク講演会」

 H29.10.28(土) 14:30から浜松で、「第4回静岡がんと生殖医療ネットワーク講演会」が行われましたので、参加して来ました。

今回のテーマは小児・若年がんを中心としたものでした。
今の医学は進歩しており、小児がんの生存率は約80%に達しています。そのため、がん対策とは別に、緩和ケアとして痛みや将来の妊孕性温存についても考えるようになっています。

静岡でもH27年よりがんになられた方もしくは治療をされた方に対して、今後の妊孕性温存や妊娠・出産についての情報を提供するため、そして医療機関同士のネットワーク構築を目的として作られたSOFnetという会があり、今まで連携がされにくかったがん専門の先生たちと不妊専門の病院との連携がされ始めてきました。

そして、Li-Fraumeni症候群についての話題が出ました。
これは、世界での報告は400家系に満たないものですが、多様な部位から生ずる若年性の遺伝性のがんで、優性遺伝のため高い発症率があります。そのため、いろんな医療機関でその方やご家族の状態を把握し、情報を共有していくことが、今後必要になっていくと感じました。

今日本では、半分の方ががんになります。
がんになられることはとても辛い事だと思います。
しかし、その先の事を本人、家族、複数の医療機関とで相談・連携し、よりその方の納得された治療方法を選択できればと思います。

下記にいくつかHPを記載します。
参考にしていただけたらと思います。

@H29.10.24 国会で「第3期がん対策推進基本計画」が閣議決定されました。
こちらに小児がん、AYA世代のがんについて、そして、治療後の長期フォローアップや緩和ケアが明記されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html

A「がん情報サービス」
http://ganjoho.jp/public/index.html

B「SOFnet」
http://www.sofnet.info/index.html
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2017年11月07日

第20回日本IVF学術集会

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 こんにちは、培養室です。今回は、2017年9月30日〜10月1日に開催された第20回日本IVF学術集会に参加しました。開催地は、宮城県の仙台にあるホテルメトロポリタン仙台で、当院から6時間ほどかかりました。
 今大会のテーマは「Challenge to Excellent ART」と題されており、ARTにおいて様々な最新の技術や知見の報告がなされていました。今回は、着床前診断、特にPGS(着床前スクリーニング)に対する発表が多いように感じました。
 PGSとは、胚盤胞の一部を採取し、染色体の数的異常を調べ染色体数に異常がない胚を選択し、移植に用いる技術です。
 日本では、倫理的な面からPGSは「命の選択」を行う行為と言われているため、PGSの臨床応用は極めて制限されています(日本産婦人科学会)。
 そのため、現在、ARTにおけるPGSの使用に対して様々な意見が飛び交っています。本大会でも、様々な視点からPGSに関する発表がいくつもされていました。
 例えば、生殖医療の観点からPGSを見た意見では、海外ではPGSを通常検査として用いている(ARTの40%近くでPGSを使用)ことに対して、日本の今の状況は「蚊帳の外」であり、日本のARTでもPGSを取り入れることが重要ではないかという発表がありました。
 一方で、PGSを倫理と道徳という観点から考えた場合の発表もありました。その発表では、人間が生きていく上で支えとなる「倫理と道徳」は、「統治の倫理」と「市場の倫理」と呼ばれる根本的に異なる価値体系が存在していて、この2つの倫理はそれぞれ独立して存在するべきであり、混同されるべきではありません。演者によると、医療は「統治の倫理」に分類され、PGSは「市場の倫理」に分類されます。つまり、医療でPGSを用いることは異なる二つの倫理を混同し、道徳的腐敗を引き起こしているものであるとして、PGSに対して否定的な意見を示していました。
 また、細胞遺伝学的の分野の観点からの発表もありました。ヒトの流産の原因の約70%は、染色体の異常であることが明らかにされています。そこで、染色体の異常を明らかにするためにPGSを用いて様々な実験が行われてきました。近年、一つの胚に正常な染色体数を持つ細胞と異常な染色体数をもつ胚(モザイク胚)の取り扱いが問題にされています。モザイク胚の約40%は、着床後妊娠を継続するという報告があります。しかし、胎児の発育や生存に関わる染色体にモザイクがある細胞を持っている胚の存在など、結果的に流産に繋がる可能性があることも明らかにされています。これらのことから、PGSの使用は、十分に注意して行う必要があるとしていました。
 このように、PGSについては現在、賛否両論であり今後どのように判断されるかは分からない状態となっています。そのため、日本でのPGSの臨床応用には、まだまだ時間が必要になりそうです。
posted by kl at 09:04| Comment(0) | 日記