2017年11月07日

第20回日本IVF学術集会

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 こんにちは、培養室です。今回は、2017年9月30日〜10月1日に開催された第20回日本IVF学術集会に参加しました。開催地は、宮城県の仙台にあるホテルメトロポリタン仙台で、当院から6時間ほどかかりました。
 今大会のテーマは「Challenge to Excellent ART」と題されており、ARTにおいて様々な最新の技術や知見の報告がなされていました。今回は、着床前診断、特にPGS(着床前スクリーニング)に対する発表が多いように感じました。
 PGSとは、胚盤胞の一部を採取し、染色体の数的異常を調べ染色体数に異常がない胚を選択し、移植に用いる技術です。
 日本では、倫理的な面からPGSは「命の選択」を行う行為と言われているため、PGSの臨床応用は極めて制限されています(日本産婦人科学会)。
 そのため、現在、ARTにおけるPGSの使用に対して様々な意見が飛び交っています。本大会でも、様々な視点からPGSに関する発表がいくつもされていました。
 例えば、生殖医療の観点からPGSを見た意見では、海外ではPGSを通常検査として用いている(ARTの40%近くでPGSを使用)ことに対して、日本の今の状況は「蚊帳の外」であり、日本のARTでもPGSを取り入れることが重要ではないかという発表がありました。
 一方で、PGSを倫理と道徳という観点から考えた場合の発表もありました。その発表では、人間が生きていく上で支えとなる「倫理と道徳」は、「統治の倫理」と「市場の倫理」と呼ばれる根本的に異なる価値体系が存在していて、この2つの倫理はそれぞれ独立して存在するべきであり、混同されるべきではありません。演者によると、医療は「統治の倫理」に分類され、PGSは「市場の倫理」に分類されます。つまり、医療でPGSを用いることは異なる二つの倫理を混同し、道徳的腐敗を引き起こしているものであるとして、PGSに対して否定的な意見を示していました。
 また、細胞遺伝学的の分野の観点からの発表もありました。ヒトの流産の原因の約70%は、染色体の異常であることが明らかにされています。そこで、染色体の異常を明らかにするためにPGSを用いて様々な実験が行われてきました。近年、一つの胚に正常な染色体数を持つ細胞と異常な染色体数をもつ胚(モザイク胚)の取り扱いが問題にされています。モザイク胚の約40%は、着床後妊娠を継続するという報告があります。しかし、胎児の発育や生存に関わる染色体にモザイクがある細胞を持っている胚の存在など、結果的に流産に繋がる可能性があることも明らかにされています。これらのことから、PGSの使用は、十分に注意して行う必要があるとしていました。
 このように、PGSについては現在、賛否両論であり今後どのように判断されるかは分からない状態となっています。そのため、日本でのPGSの臨床応用には、まだまだ時間が必要になりそうです。
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2017年08月28日

2017年度 受精着床学会

 こんにちは、培養室です。
2017年7月20日(木)、21日(金)に開催された「受精着床学会」に参加しました。
会場は、新潟県の「米子コンベンションセンターBiG SHiP」です。
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 今回の大会の様々な発表の中でも、特に母体や卵子の老化についての検討が多いように感じました。
既に、加齢が卵子の質を低下させ、結果的に妊娠率を低下させることは報告されています。
そのため、現在、加齢が卵子に与える影響についての検討が世界中で行われています。
今回は、それらの発表について触れていこうと思います。
 まず、ヒトの老化モデル動物として加齢したマウスを使用した実験で、加齢が生殖能力に及ぼす影響について
検討した発表がありました。この発表では、加齢マウスの胎仔の産出率は、若齢マウスと比較して低下する傾向にあることを示しました。その原因として、老化した卵子は、活性酸素種(ROS)などに対するストレスの影響を受けやすいためとしていました。また、老化の影響は卵子だけでなく、卵巣にも及んでいることが明らかにされました。
 このように、老化に対して様々なことが明らかにされており、老化に対する抑制法や改善法などの模索もされています。現在は、未だ効果的な抑制法や改善法は報告されていません。今後の検討に期待が集まっています。
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2017年06月16日

精子観察キットを使用した感想


 こんにちは、培養室です。

 今回は、手軽に自分で精子を観察することが出来るキットについて説明します。

 精子の観察というと、病院で検査を受けなければ出来ませんでした。しかし、最近、自分でスマートフォンを使い、精子を観察することが出来るキットが数社から開発されました。
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今回は、「TENGA MEN'S LOUPE」というキットを使用し、実際に精子を観察しました。結果、精液中に運動精子を見つけることが出来ました。

 使用した私たちの意見として、キットを用いた精子の観察は手軽に行えるものと思っていたのですが、思いのほか試行錯誤し、コツのいる少し難しいものでした。投稿した動画からもわかる通り、精子の有無は観察できるのですが、精子濃度や運動率などの詳細な情報を得ることは難しいと感じました。

 そのため、「自分の精液に精子がいるかどうか分からなくて不安だけど、病院で検査を受けるのも気が進まない」といった方は、一度、試してみても良いかもしれません。
 また、キットの長所と短所をまとめてみました。参考にしてください。
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 不妊症で悩むカップルの約半数は、男性側に原因があります。
しかし、病院で検査するということは、なかなか勇気がいるものです。そこで、まずは自分自身で空いた時間に検査してみるのも一つの方法かと思います。
posted by kl at 16:39| Comment(0) | 日記